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プライマリ・ケアとは

 みなさんは最近、医療機関を受診される機会がありましたでしょうか?その際、どのようなことを感じ、思われましたでしょうか?みなさんはどのような医師や医療を必要としていますか?病気になって不安を感じているとき、多くの人たちにとって身近で何でも気軽に相談することができる医師や医療者の存在は大きなものとなることでしょう。
 プライマリ・ケアは簡単に言うと「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」となりますが、身近な医療にはどのようなことが求められているのかを考えながら、プライマリ・ケアの概念についてもう少し深く考えてみましょう。

 ◯ 何でも診てくれる
 ◯ 対応できない問題の場合
 ◯ あなたの病気は本当に身体だけの問題でしょうか?
 ◯ どうしてこの医療機関を受診したのでしょうか?
 ◯ クスリを定められたとおりに服用することはできるでしょうか?
 ◯ 受診を続けていくことは可能でしょうか?
 ◯ 予防的な視点から
 ◯ 治らない病気に対しても
 ◯ 地域の中のネットワークの広がり

◯ 何でも診てくれる

例えば以下のような場合、あなたはどうしますか?

  • 風邪を引いたとき
  • 高血圧と糖尿病でずっとクスリを飲まなくてはならなくなったとき
  • 子どもが夜中に突然熱を出したとき
  • ぎっくり腰になったとき
  • “じんましん”が出たとき
  • タバコをやめたいと思ったとき
  • インフルエンザの予防接種を受けようと思ったとき
  • 最近、どうも調子が悪く、「更年期障害」ではないかと思うとき
  • 身体がしんどくて何もやる気がでず、夜に目が覚めて眠れない日々が続くとき
  • 包丁で手をザックリと切ってしまったとき
  • 背中の痛みが続いていて、大きな病院を受診した方がよいのかどうか悩むとき
  • 認知症のおじいちゃんの介護に手がかかるようになり、主治医意見書を書いてほしいとき
  • がんの末期だが、住み慣れた自宅で余生を過ごしたいと思ったとき

 いずれも日常的によくあることですが、こんな場合、あなたならどのようにしますか?家族に意見を聞いたり、市販薬を用いて様子を見てみたりするかもしれません。ですが、それでも問題が解決しない場合、医療機関の受診を検討されることでしょう。そのような際、真っ先に受診する医療機関は、まさに「プライマリ・ケアを提供する」医療機関です。ここでは日常的に起こる健康問題の大半について解決することが可能です。

◯ 対応できない問題の場合

 しかしながら、プライマリ・ケアの現場だけですべてが解決する訳ではありません。生命に関わる状態で緊急の治療をしなくてはならない場合、高度で専門的な治療を要する場合、非常に珍しく解決が難しい病気、特殊な検査が必要な場合などがそれにあたりますが、そのような場合は当然、該当する高次医療機関と連携しながら問題の解決にあたることが望まれます。

◯ あなたの病気は本当に身体だけの問題でしょうか?

 病気の原因は、単に臓器の異常だけとは限らず、生活や仕事、家族や友人との関係、悩みごとなどにあるかもしれません。ある調査によると、プライマリ・ケアの現場では、来院される患者さんの訴えの原因となる病気を特定することができたのは半数にしか満たなかったそうです。何かの病気だけではなく、生活している様々な背景が重なって症状を生み出していることもあるのです。いずれにしても、治療を受けるのは、あくまで「あなた」であって、あなたの「心臓」や「ひざ」ではないはずです。症状のある臓器だけを治療しても本来の問題は解決しません。そのような際、身体と心、社会的背景などを総合的に診療することが必要とされます。

◯ どうしてこの医療機関を受診したのでしょうか?

 あなたは「発熱」や「頭痛」あるいはその他の理由で医療機関を受診されると思います。しかし、同時に何らかの「思い」や「考え」を持たれているのではないでしょうか?体の問題と同様、あなたの置かれた状況や考え、ご希望は治療にあたっても非常に重要となります。例えば、「週末は仕事が立てこんでおり、何としても今日中に風邪を治したい」、「隣人が先日、くも膜下出血で急逝した。自分は頭のMRI検査を受けなくてよいだろうか?」、「子どもは今年受験生なので、何としてもインフルエンザにかからないようにしたい!」などなど。そういった考えや思いが尊重された上で検査や治療が行われる必要があるでしょう。

◯ クスリを定められたとおりに服用することはできるでしょうか?

 認知症の患者さんは決まった時間に正しく服薬できないことが少なくありません。薬を飲ませてくれる家族はいますか。背中にシップを塗るのは健康な人でも難しいものです。また、仕事に通う働き盛りの人は昼食後の内服を忘れることがよくあります。クスリの処方についても、その人の状況をよく理解した上で行われる必要があります。

◯ 受診を続けていくことは可能でしょうか?

 地理的、時間的に受診が困難な方はいませんか?高齢者にとって受診時の送迎や付き添いをしてくれる方はいるでしょうか?仕事を持ちながら定期的な受診ができますか?また経済的な面での問題はありませんでしょうか?医療機関を受診すること自体に敷居があることは否めません。しかしながら、そのために受診が遅れ病状が悪化することは避けなければなりません。プライマリ・ケアの現場では「かかりやすさ」をどのようにすれば高めることができるかが求められています。場合によっては訪問診療や往診が行われています。

◯ 予防的な視点から

 インフルエンザワクチンを接種しましたか?車に乗るときはシートベルトをしていますか?癌健診を受けていますか?疲労がたまりすぎていませんか?気分が落ち込み、やる気がでないようなことはありませんか?骨粗鬆症になっていませんか?病気が生じる前に病気を予防する視点ではたらきかけが行われています。病気を防ぐことができ、同時に増大する医療費を抑制することも可能です。

◯ 治らない病気に対しても

 残念ながら現在の医学では治らない病気もたくさんあります。「老化」も現在の医学で遅らせることはできたとしても、止めることはできません。しかし、完全な病気の治癒ができないとしても、進行を遅らせたり、痛みや苦痛を緩和して日常生活を送ることができたり、避けられない死や痛みをコントロールして平穏に迎えることは多くの人たちが望んでいることではないでしょうか。

◯ 地域の中のネットワークの広がり

 病気や障害を持つ人が「生活していく上で何が困難か、それに対してどうすればよいか」ということを考えていくことも大切です。その際欠かせないのがそれぞれの地域の医療・福祉・介護・保健のネットワークです。障害のある方が地域で安心して生活していくためには、医療福祉保健の専門家だけでなく、地域住民が共にチームを組んで支援していくことが求められます。

 このような視点を持ちながら、みなさんの身近な立場で健康をサポートする医療、介護、福祉、保健をまとめて「プライマリ・ケア」を呼びます。少子高齢化社会を迎えるにあたって、今後、医療の中でますます重要な役割を果たしていかなくてはなりません。