プライマリ・ケア関連3学会が一致団結して新しい一歩を踏み出すことができたことは、日本の医療史において画期的な出来事であります。学会は医学が専門細分化を繰り返す中、異なった名称を使い、その数を増やしてきたからです。
それぞれの特徴や役割の差異を強調して次々と誕生してきた学会ですから、会員層も異なり、一つにまとめることは異例なことです。そもそも学会数の増加は医学細分化の象徴でもあります。
プライマリ・ケア関連3学会の合併は超高齢社会の到来や医師不足によって生じた医療提供体制の課題を、関連学会が力を合わせて解決しようと意図して議論がスタートしました。少ない医療資源を有効に活用するには、狭義の一次医療のみでなく、地域包括医療の基盤であるプライマリ・ケア部分の役割を明確にする必要があります。それは狭義の一次医療のみを実践することではなく、多職種協働で保健・医療・福祉の連携を通し、地域住民の生活を支える医療を担うことでもあります。
そのために家庭医、病院総合医を育て、その理念を広めること。医療界と国民に対する情報発信力を高めるために、小異を捨てて大同につくことで合併へとこぎつけました。
合併した日本プライマリ・ケア学会(以下・PC学会)、日本家庭医療学会(FM学会)、日本総合診療医学会(GM学会)は、それぞれ会員層やめざす理念が少しずつ違います。PC学会は開業医が多く、歯科医師、薬剤師、看護職なども会員であります。地域ケアを重視してきました。FM学会はプライマリ・ケアに特化した水平型の専門医である家庭医養成を主眼に若手医師や学生が多く集っています。GM学会は大学病院や研修指定病院など比較的大規模病院の総合診療科勤務医が主なメンバーで、教育、研究に力を入れてきました。
ただ、3学会を合わせても会員数は6,000人あまりの小さな学会が、バラバラに活動していても、医療界や国民への影響力は低かったと言えます。プライマリ・ケア分野の学会が一つになることで、国民にとってわかりやすい医師像を示したい。患者の身近にいて、医療の道案内のできる家庭医、病院総合医の存在をアピールしたい。そうした思いが私自身には強くあります。
超高齢社会における医療提供体制に関しては、高齢者が大病院に行き、複数の診療科を受診して薬を大量に処方されたり、多彩な症状を抱えてどこから治療を始めればいいのか判断できないといった事態がみられます。患者を総合的、継続的に診る医師を多く育てれば、高齢患者の複雑な疾患に対して的確な診断で専門医につないだり、治療の優先順位を決めるお手伝いができます。
地方の医療は崩壊の危機にあると言われてきました。患者の医療ニーズに応えにくい現状とともに、供給サイドの問題点もあります。高度専門医療偏重の趨勢で臓器別の専門医が増えたことで、一人の医師が診療できる範囲が狭まり、地方の中核病院では、幅広い診療ができる医師がいないと対応できない状況が生まれています。内科ばかりでなく、小児科、産婦人科の基本診療を補完できる医師が望まれる所以です。
新学会はこうした医療提供体制の不備改善を目的に、新しく統一された専門医の認定制度をつくる予定です。専門医は第一診療科群として、内科・外科に続く第3極の診療科をめざすべきと考えます。すでにPC学会は1993年から認定医制度を設置、2001年には第1回の専門医試験を行ってきました。プライマリ・ケア認定薬剤師制度もスタートさせました。FM学会はプログラム認定を基本に後期研修を充実させ、2009年から専門医試験を実施しています。GM学会も病院総合医認定の準備が進んでおります。今後は早急にこれらの整合性を図る必要があります。実際には認定医、専門医の2階建てが望ましく、また国民からの信頼を得るためには、これら医師の認定を学会主導でなく、第三者機関にゆだねる方向で進めるべきと個人的には考えています。
学会の名称は各学会執行部間でかなりの議論の末、日本プライマリ・ケア連合学会となりました。国民にプライマリ・ケアの意義をどう理解してもらうかも発展の鍵となるでありましょう。学会名称についてはさらに議論していく予定です。
会員の皆様の英知を出し合い、わが国の医療の基盤となる部分の質を高める努力を重ねていきましょう。